ESD: 理想的な切開ラインと現実

 剥離を行う際にどのようなラインで剥離していくのでしょう?

 基本的には,固有筋層のちょっと上で剥離していきます.

理由は,粘膜下層の上層から中層は脂肪が多く,血管は分岐した後となり処理しなくてはならない回数が増えます.そのため必然的に出血も増えます.

 剥離ラインは粘膜下層の下1/3を狙う.けれどぎりぎりは怖いです.胃では筋層を剥いてもいいですが,食道では漿膜がないため縦郭気腫をきたします.しかし,胃でも大腸でもわずかに粘膜下層があったほうがお手付きをしても穿孔せずに済む可能性が増えますし,出血しても粘膜下層をつかんで凝固ができます.

理想の剥離ラインからの乖離

 理想通り剥離ラインに沿って剥離できればいいのですが,なかなかそうはいきません.

 どうしても筋層側へナイフが向かうことが怖いので筋層から逃げながら剥離を行っていきます.初心者はこのにげる動作の時に,粘膜近傍まで逃げてしまいます.

 このことが初心者の剥離を困難にしている要因の一つと考えています.

粘膜近傍まで剥離ラインを作ってしまうと,その次の剥離開始位置が,デバイスが切開ラインに沿って滑ってしまい,粘膜近傍の粘膜下層となってしまいます.そこから粘膜下層の深層を狙うのですが,あまり力をかけると筋層までいくので,怖がってすぐにまた粘膜方向に逃げます.その繰り返しで,剥離ラインが粘膜下層の浅いところに形成されてしまいます.無事剥離ラインが形成されればいいですが,血管や脂肪層のぶち当たり思ったような剥離を進めていけないこともしばしば見受けられます.

ああ

形成された剥離ライン

次のスタートが粘膜下層の浅いところとなる.

これを繰り返すことで,剥離ラインが浅いところに形成される.

では,どうやって粘膜下層の深層を剥離していくのか

上記のようになり易いとういうことを理解する

  初心者のうちは浅いところを切りがち,切らされがちになり易いです.まずそのことを知り,自分がどの層を剥離していっているかを意識することが第一です.粘膜下層のどこでもいいやと,適当に剥離していってもうまくなりません.

技術的な工夫

 剥離ラインを理想通り切れないなら,なんらかの工夫が必要です.上級医も基本は下記の操作を微妙に行って剥離ラインを保ってます.ジグザグの波が大きいか小さいかの違いです.では実際を説明していきます.

筋層から逃げるのは理解できるが,粘膜下層の上層まで上がらずに,途中で剥離を止めて,次の剥離を下方向に進めます(実際は右方向への力も加わるので右下になります).

 

もし,粘膜下層の上層まで剥離しても途中から再開すれば問題ありません.しかし上記で述べたように,力をかけて右方向に(図の場合)進もうとするとナイフは剥離ラインのスロープに沿って粘膜下層の浅いところに行ってしまう.

それを回避するために,,スタートしたい 位置でわずかに下から右下(図の場合)に力をかけて凝固を踏んで,溝を形成します.「わずかに」というのがあいまいなのでわたしは「ナイフのシャフト1本分(デバイスそのものではないです)」と表現しています.その溝によりナイフが固定され右方向への力が上に逃げていかず,下への力と合わさって(合成ベクトルは)右下になります.

それらの工夫により

 理想の剥離ラインに近づきます.

 中級になるとこの作業が細かくなります.さらにアングルやファイバーのトルクで力の方向の変化を「離散的」ではなく「連続的」にすることでなめらから剥離ラインとなります.

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