ESDでの糸付きクリップの有用性は今更語るまでもありません.
なくてもできますが,あったほうが便利です.オリンパス社のEZ clipとデンタルフロスで作られている施設もあると思いますが,EZ Clipの構造上,あらかじめ作るならケースに再装填しなくてはならないし,その都度作るのは面倒くさいです.
わたしはゼオンメディカル社のゼオクリップを用いています.
ゼオクリップを使う理由
糸をつけるための穴が開いている
標準のクリップのみアームの部分に穴が開いています.全部に開ければいいのになぜか標準のクリップのみにあいています.ここに糸を通すと容易に糸付きクリップが作れます.結び方は何でもいいのですがクリンチノットを推奨しています.

クリンチノット

出典: http://www.e-leisure.jp
クリップの構造がシンプルなので作成・使用が簡単
クリップの閉鎖がはと目を先進させることで行われるため,万が一はずれても再利用可能ですし,糸付きクリップを作り置きしていても,装填が簡単です.もともとの装填方法とは異なりますがS-Oクリップも同様の方法で装填しますので,慣れておいた方がいいでしょう.
クリップの再収納が可能
糸付きクリップを使う場合とは関係ないですが,クリップを出した後再収納が可能です.EZ clipのように出したら返しのため再収納ができないということはないです.そのため「糸をつかむ」とう操作が可能です.クリップで糸を引っかけて再収納すれば糸を把持した状態となります.
EDチューブの先に糸をつけて,胃内でその糸を把持して水平部に打ち付ける.S-Oクリップやあ糸付きクリップのアンカーを打つとときも有用です.最近は SureClip(Micro-Tech) のほうが少し高価ですが使い勝手がいいのでそちらを用いることが増えていますが,ゼオクリップのほうが安価なので悩むところです.
ゼオクリップの問題点
把持力が弱い
EZ clipに比べると把持力は弱いです.粘膜を普通につかんで糸を引っ張ると閉じた状態でクリップが外れることがあります.EZ clipなら粘膜が引きちぎれます.そのため,わたしはアームの部分を少しだけ内側に曲げて使っています(自己責任).
単純な縫縮であれば問題ないですが,止血では頼りなさすぎです.しかし,把持するときEZ clipのようにパチンとならないので,筋層損傷のリペアなどには優しく縫縮することが可能です.穿孔などきちんと縫縮したいときはSureClip(Micro-Tech)のほうが安心です.
デリバリーの作りがいまいち
何度も使っているとコイルシースがだめになります.2重構造となっていますが,糸付きクリップやS-Oクリップなどの特殊クリップの場合,装填しにくかったり,シースから出そうとした場合うまく出てくれないことがあります,把持するときもアングルがかかっていたりすると,ハンドルを握ってもはと目の部分が先進しないことがあり,把持するときはハンドルを何度も握りこむ必要があります.クリップをかけた後はゆっくりリリースして,はと目がかかっていることを確認してから完全にリリースし,はと目が動いてなさそうならすぐにハンドルを握って把持しなおします.
リリース時もハンドル部ではリリースできているはずなのに先端には伝わらず,クリップがなかなか外れてくれないことがあります.そのためクリップを出すときやリリース時にはできるだけアングルは解除してあげる必要があります.
普通のクリップの時にはそんな苦労はないので無理をさせているのだと思います.
糸は何を使う?
テグス 3号です.なんでもいいですがあまり太いとゼオクリップのデリバリーに結び目が引っかかるし,細いと扱いにくいです.(手芸屋さんや100均,釣具屋で買えることは秘密です.点墨の墨汁よりましか…)
糸は何で把持する?
糸が口から出ていますが,そのままではテンションはかかりません.術者のいいようにテンションをかけましょう.糸をつかむものは上記のテグスをつかめれば鉗子でも事務クリップでも構いませんが,ある程度自重があるものでないとテンションがかかりません.
鉗子を患者台から落とした状態でテンションをかけると,重い鉗子では把持部に負荷がかかりすぎてちぎれる原因になります.そのため鉗子を使う場合は口に近いところで糸を把持し,患者台の上に置いておきます.あとは自分で軽く引っ張って調節しましょう.
最後に
糸付きクリップは食道ではマストですし,胃や直腸でも剥離の容易化,効率向上に非常に有用です.用いてない施設はないと思いますが,まだなご施設やEZ cilpで苦労してやっている施設はぜひ導入してみてください.
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