ESD ポケットを作っているのか,作らされているのか

胃に限った話ではないですが,剥離を行う方向として

  • 外から内
  • 内から外

の2つがあります.外から内にデバイスを振るケースは先端系であまりないのでITナイフの場合のみの話になります

そもそもなぜ中から外に剥離するのか?

 ITナイフの場合,外から中の場合の問題点として

  •  中途半端な凝固でトリミング・剥離をすると血管だけを損傷して出血することがある
  •  筋層と水平にしたいが,少し筋層側に力がかかる

 内から外(とくに切開ライン)へ抜ける場合,凝固を十分行って切り抜けることができます.外から中という操作は往々にして,上から下への操作(少し斜め下に力をかける)になります.そのため危ないし,そもそも怖いです.また,そのような状況で凝固を行うと筋層への熱損傷を恐れるためどうしても浅い凝固を繰り返す必要があります.そのため血管に凝固波が当たった場合,血管をつぶすほどの凝固熱が発生せず出血することとなります.

 外から中へ剥離できる場合は別にそうすればいいのです.ただ,中から外で行う方が容易なことが胃角より口側では多くなっていきます.

 内から外に剥離を進めるとポケットが形成され手前の端に岬のようなでっぱりができることがあります.

岬の形成のメカニズム

 Pocket creation methodのように意図してそうしているならいいのですが,デバイスを奥側へ振り抜けず,手前に引いて逃げるようにトリミングをしてしまった結果(上の段),どんどん三角の岬がシャープになっていきます.この状態でいくら奥へ剥離を進めても岬の部分の粘膜下層が残っているためフラップは形成されず,粘膜はめくれ上がりません.

 下段のようにデバイスを奥に振りぬくように動かすことで岬の形成を防ぎます.シャープな岬になればなるほど岬の部分の粘膜下層のボリュームが減り,局注しても膨隆しません.もともと術者の未熟さで奥へ振り抜くことができなかったために形成された岬は,どんどん処理の難易度があがるため,当然どつぼにはまります.

 対策

このような剥離形態となる可能性を知る.

 なんだか剥離して気持ちいい状態となるため,知らず知らずのうちに上段のような岬を形成することがあります.「胃体部の剥離をスムーズに進めている俺は中級だな」と錯覚させられどんどんポケットを深くして,岬を作らされていることに気づかないのです.

岬をシャープにする前に頑張って振りぬく.

 慣れると岬を作らされそうになっていることに気づくようになるので,剥離を進めたくなる誘惑に負けず,頑張って岬の部分を削る.

ESD stomach lower body less dessection with string clip

全周切開後に糸付きクリップで岬の部分を無理やり膨隆(明瞭化)させ剥離する.

 どうしても無理なら全周切開をしているのなら,糸付きクリップをかけて剥離ラインを見えるように展開させる.

そこの処理は最後にする

 禁断の方法です.判断をミスするともっとどつぼにはまります.

 ESDの原則に「難しいところから行う」とものがあります.難しいところを後回しにするともっと難しくなることが多いです.

 しかし,反対側の端はうまく落とせるのなら,岬を作った方と反対側から回って剥離を継続していく.また,肛門側で岬を作ったなら,口側からのアプローチに変更することも考慮します.ただ,どちらも岬の部分を処理できない技術では難しく,結局指導医とチェンジすることになるでしょう.

あるある集

岬の部分が凝血で黒っぽくなっている

 岬の部分が出血と絡んでくると非常に厄介です.全周切開時の出血で止血処置をした影響で岬の部分の粘膜下層が黒っぽく炭化していることがあります.剥離時の出血でも同様のことが起こります.この場合,炭化して水分がなくなっている粘膜下層は切れにくく(切れなく)なっており,初心者では突破困難です.

早めに炭化を察知し,岬をとがらす前にデバイスを奥へ振り抜きましょう.

時には物理的に切ることもあります.

きれいな粘膜下層だけを剥離していき,炭化した部分のみを残して,ナイフにひっかけて引きちぎる.初心者はコアグラスパでつかみきってもいいです.

また,出血したということは,血管(あたりが凝血で黒っぽくなっているということは太い血管から出血した可能性大)が潜んでいるということを疑わなくてはなりません.特に粘膜下層の透過性が低下しているため血管が視認できず,やみくもに剥離を進めると,再出血で被害を拡大します.

外から内に切り替えて岬の部分を削ろうとする

 岬の部分の剥離を内側から奥へ切り抜けれない場合,外からトリミング・剥離へ切り替えるトレイニーがいます.これができる術者は,とっくに岬の部分を切り抜けているので,できない術者は外からのトリミングで岬をどんどん研いでいきよりシャープな岬を形成することになります.

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