潰瘍出血の止血:血管をつかんで止めるのか?

内視鏡

 ヘリコバクターピロリ菌の感染率の低下や肝炎ウイルスの制御のおかげで内視鏡的止血術の頻度はめっきり下がりました.そのため初学者が腕を磨く,度胸をつける場が減っていると感じております.

 そうはいってもNSAIDsやESD後の出血はたまにあるので,できる限り止血処置をしてもらっています.使うデバイスは潰瘍出血ではまずオリンパス社のコアグラスパですね.以前はクリップやHSE,エタノールなどを用いており,クリップをかける技術論に花が咲きましたが,いまはコアスパでじゅじゅっと焼くことが多く,クリッピングの技術低下が懸念されます.また,最近はHSEが通じないこともあり,エタノールがなぜ内視鏡室にあるか理解していない内視鏡医や看護師もいます.止血術の引き出しがあまりないと思う先生は古い内視鏡の雑誌や本を読んでみてはいかがでしょう?

 では,本題にはいります.

 コアグラスパのような止血鉗子で潰瘍の血管をつかもうとがんばっている人を見かけます.ESD中の生々しい血管と違って,潰瘍出血の露出血管なんてわずかに飛び出ているか,平坦です.また,潰瘍底が硬い場合こともあり「血管を把持する」ということが困難な場合が多いです.

 ESD時でも出血前の血管のプレコアグレーション時であれば血管をきちんと把持できますが,いったん出血してしまった場合,血管そのものをつかむことが難しいこともあります.

 止血術のポイント

出血点を同定する

 どこから出ているか把握することが第一です.そのためには出た瞬間の状態を覚えておく必要があります.「あそこを切ったときに出血した」という状況を把握していればだいたいの出血点は分かります.またspurtingで出血している場合も出血点の同定が容易です.しかしいざ止血鉗子を近づけると,カップに出血が当たって出血点が見にくくなることがあります.spurtingではないが出血が激しく,出血点がわからない時はウオータージェットで血液をどけて出血点を同定しましょう.ジェットを止めるとあっという間に真っ赤になってしまうかもしれません.出血点の同定は出血点のみならず,周りとの位置関係の把握も重要です.「あの焦げたところの少し左」とかほかの構造物との相対的な位置関係を把握することで血の海に沈んだ出血点を把握することが可能となります.

 また出血点が血の海に沈んでどうしようもないなら,体位変換を用いましょう.胃や食道の場合は仰臥位と左側臥位のどちらかになりますが,どちらかはまだましなはずです.右側臥位もやることがありますが,どちらかというと残渣をよけて観察するときぐらいで,止血処置時に右側臥位はかなりやりにくい体位といえます.大腸であれば4方向いずれも用いることが容易です.

止血できたと油断しない

 出血点をつまむことができたら,ジェットで洗うと活動性出血は止まったことが分かります.そうなればゆっくり凝固するだけです.止まったと思っても離すとすぐ出血することがあるので,話すときはゆっくり,かつ場所を動かさないことが重要です.把持を緩めると出血するなら,即座に把持しなおして凝固を行います.止まったと油断して,鉗子を離した直後に出血させると位置からやり直しになります.

血管把持にこだわらない

 出血点を下記のごとく把持できる場合はいいですが,現実はなかなかうまく把持できません.

 出血点を把持しに行っても血が止まらない,すなわち出血点を外した場合.大事なのはどの方向に,どれだけの距離を外したか把握することです.近傍であれば,周りの結合織(粘膜下層)をつかんで止血鉗子を安定させて,血管方向に鉗子を振って,スパークを飛ばせばいいです.

左の図のように少しずれても血管方向に少し力をかけて血管に電流がなられればいいのです .

 血管をつかもうとして何度も空振りするぐらいなら近くでいいのでつかんでください.この時にほとんど血管上をつかんだのか少し離れたかを確認・意識してください.ばしっとつかめば活動性出血はとまりますが,最悪止まってなくてもすこし離れた位置から血管方向へ電流を流して焼けばいいのです.

出血してそうなところの上流から攻める

 出血点がよくわからない場合は血が流れてくる上流から攻めましょう.噴出性でなければ重力に従って血は流れます.下流側から攻めてもらちがあきません.やみくもに止血しているレジデントがいますが,重力を理解してないのではと思うことがあります.

 勢いがあると出血点より少し重力の反対側から血が流れているように見える場合があります.そんな時は上流より少し下流を止血すればいいです.

把持することにこだわらない

 いまいちつかみにくいときや点で止血したいときがあります.その場合は 把持せずに,鉗子を閉じた状態で止血します.どうしてもつかむと大きくかみつくことがり,焼灼範囲が広くなります

 その時は呼吸や心拍動の影響を受けますのでアタッチメントを胃壁に当ててファイバーをできるだけ固定して止血します.アタッチメントでファイバーを固定できない場合は離れたターゲットを追っかけて止血するのではなく,ターゲットがもっとも近づく位置で待って,デバイスに出血点が当たる,もしくは触るぐらいでフットスイッチを踏みます.空振りに終わってもかまいませんが,強く当たって穿孔するよりましです.何度かやると当たるときがあるので根気よく試みましょう.

 追っかけていって止血すると,急に近づいてきた際にデバイスをターゲットに押し付け過ぎになってしまい穿孔のリスクが増加します.

hemostasis: postESD ulcer

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