ESD: 前庭部小彎病変 初心者からの脱却にむけて

 ESDのトレーニングは前庭部から開始することが多いですが,必ずしも胃体部より簡単であるというわけではありません.鉗子が出る側である前壁や大彎は確かにビギナー向けですが,後壁となるとブラインド気味にアプローチしなくてはならないシチュエーションが出てきますし,小彎はアプローチにバリエーションが非常に多くなります.幽門輪近傍は幽門側の処理が難しいです.

 今回は前庭部小彎への取り組みを考えてみたいと思います.前庭部小彎をサラッと切れたらビギナーとは言わせません!(一応ITナイフユーザー向けです.)

すぐにぶち当たる問題点

  • 前庭部小彎は正面視になりがちである
  • 左側臥位で水没する
  • 前庭部小彎と言いながら胃角が絡んでくる

前庭部小彎は正面視になりがちである.

 観察は非常にしやすいですし,マーキングや局注は病変を視認してまっすぐデバイスを当てれば,比較的簡単にできます.しかし,いざプレカットを行おうとすると途端に怪しくなります.垂直にデバイスが当たるためできるだけファイバーを押し込んで接線方向を作る必要があります口側はファイバーを押し込めば何とか接線方向でアプローチができると思いますが,肛門側はそうはいきません.肛門側のアプローチに関しては後述します.

左側臥位で水没する

 全周切開レベルではあまり問題にならないかもしれませんが,剥離時には結構うっとうしいシチュエーションになることがあります.出血したら出血点が視認できず,どうにもならないことがあります.離れるとたいして水没してなくてもファイバーを押し付けて近接すると水が集まってくることがあるので必要以上に周囲の水を吸引しておく必要があります.

また体位変換も有用ですが,せいぜい仰臥位止まりです.そこまで有用ではないかもしれませんが,やらないよりましです.

右側臥位にするほど追い込まれるときは上級医が介入しているはずです.

糸付きクリップで粘膜下層を展開すると剥離面が広くなるため水没していないラインを狙うことが可能になることがあります.

前庭部小彎と言いながら胃角が絡んでくる

 蠕動なども絡んできたり,病変は前庭部小彎でもマーキングしてその口側を切るとなると胃角またぎになることがあったりします.心の準備ができていないと胃角部のアンジュレーションに対応できず,胃角部を切り込んでしまうことになります.胃角が絡んでくると潜在性の潰瘍瘢痕と出会うこともあり,そのようなときはビギナーはあきらめましょう.

プレカットを肛門側に作るかどうか?

これは結局肛門側に反転でアプローチできるかどうかにかかってきます.前庭部小彎の病変はバリエーションが多彩で肛門側に容易にアプローチできず比較的前庭部小彎でも口側に位置し,サイズも小さいもの以外にも幽門輪近傍まで伸びているものがあります.容易に反転で肛門側にアプローチできるも,絶対に反転で肛門側にアプローチできないものは悩みません.

 微妙なときが問題です.

悩んだらプレカットを肛門側に作りましょう.

 作るタイミングは口側と同時期でもいいですし,口側からITナイフを引いてきて,肛門側へのアプローチが無理そうな場合に肛門側にプレカットを置いてもいいです.無理して押し込んでぎりぎり肛門側にアプローチできるシチュエーションであっても強い押し込みは患者への負担(苦しむ,暴れるから小彎裂創を形成する)になるため個人的にはお勧めしません.おとなしく肛門側にプレカットを置いて見下ろしで引き切りした方が楽です.ただ初心者の先生はこの引き切りが見下ろしの引き切りが苦手で,どうしても反転で無理して戦おうとします.ぜひいろんな動画をみて見下ろしの引き切りの感覚を身に着けてください.

全周切開をしてから剥離か,口側を少し残して剥離をするか?

一時期はテンションを残す目的で口側を残していましたが,本当にテンションがかかっているのか疑問(特に大きな病変),テンションが欲しければ糸付きクリップを使えばいいじゃないかとの考えになり,最近は全周切開をまず行わせています.

剥離はさすがに肛門側から

 ここが一番問題になります.問題なく反転して肛門側にアプローチできる症例はいいのですが,上で述べたように肛門側にプレカットを置いて,見下ろしの引き切りで全周切開を行った症例では,肛門側に簡単にはアプローチできません.

 さすがに口側からの剥離を初心者には勧められませんし,口側からアプローチできる技術があれば初心者ではありません.

 初心者は肛門側へ何とかしてアプローチしていかなくてはいけません.一番いいのは何とか頑張って肛門側を剥離していくことですが,できないことが少なくないです.そんな時にどうやって切り抜けるか?

肛門側(6時方向)ではなく,少しずらした方向からトリミング・剥離を開始する

反転でも見下ろしでもなかなか目的の肛門側へアプローチ困難な場合はアプローチがぎりぎりできる肛門側を少しずつ剥離し,ポケット気味になった剥離エリアを肛門側に広げていきます.鉗子口の位置の影響で一般的には7時,8時方向から入っていくことが多いです.たまに4,5時からのほうが入りやすいこともあるので決めつけてはいけません.少しずつポケットを掘っていき,ナイフを引っかけて肛門側に切り抜けます.

見下ろしでしたアプローチできない場合は肛門側の前壁側のトリミングを徐々に剥離に切り替えていきます.これでうまくない場合は厳しいです.

幽門輪近傍に肛門側の切開ラインが位置する場合はまた別の項目で説明します.初心者は幽門輪と離れていることが前提です.

それでもだめなら糸付きクリップだ!

 ファイバー操作だけでどうにもならないならおとなしく糸付きクリップを使いましょう.剥離できた部分の一番肛門側に糸付きクリップをかけて,肛門側の粘膜下層を展開しましょう.確実に剥離ができているフラップ化した粘膜をつかんでください.思ったより口側をつかんだら,もう一つ肛門側へかければいいです.間違っても剥離できていないところをつかんではいけません.初心者ではどうすることもできなくなります.

前庭部の鬼門となる小彎のお話でした.幽門輪近傍も難しいですが,できるようになれば難しい小彎よりはましかと思います.

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